イラン中部ザーグロス山脈の東に開けた古都イスファハンは、サファーヴィー朝の頃、その繁栄を「世界の半分」と称され、その美しさを「イランの真珠」と讃えられました。絨毯づくりの伝統もこの当時より引き継がれ、イラン第一の産地として格調高い絨毯づくりが行われています。
イスファハンから東、小さなオアシスの町ナインは、ウールの伝統的衣装の産地でしたが、この産業の衰退により、イスファハンから絨毯づくりの技術がもたらされたのは、1920年代のことです。わずかの間にイランでも第一級の産地となり、色調は控えめで、日本人の好みに合う落ち着いたトーンの絨毯が作られています。
テヘランとイスファハンのほぼ中心に位置するカシャーンは、古くから工芸の町と知られ、イランの国の花であるバラの産地としても有名です。技術の高さは、「カシャーンから来た人」という表現がイランでは最高の賛辞とされてきたことからもうかがい知ることができます。伝統的なメダリオンを配した正統派のデザインで、奇をてらわず、流行におもねることのない絨毯が数多くつくられています。
テヘランの北西にあるタブリーズは、古くからシルクロードの交易の重要な地でした。17世紀以来、絨毯の最も重要な産地の一つとして有名です。19世紀、絨毯産業復興にタブリーズ商人の果たした役割は大きなものがあります。その西欧を意識した絨毯づくりは、デザイン上にも顕著にあらわれ、ペルシャ全域はもちろん世界中の意匠を動員して演出が、はかられています。
テヘランの南に位置する聖地クムは、シルク絨毯の産地として有名です。絨毯づくりが始まったのは、1930年代ほどからと比較的新しく、伝統柄というものがないため、ペルシャはもとよりコーカサスなど様々な産地のデザインを用い発展させ、華やかな絨毯がつくられています。